こんにちは〜今、中国の浙江省で新作ドラマ《ハルピン1944》の撮影をしています。

7月下旬までの予定で毎日奮闘してます。

実は、今作は自分にとって100作目の節目の作品出演なんですよ。

多いか少ないかはわからんけど、ここまでやってこれたのは本当よかったなっておもてます。

今回の作品の監督さんについて、ちょっと話してみたいんやけど、

张黎監督という人で、彼は中国の芸能業界ではヒット作をバンバン出している監督で有名で、それだけではなくて、大御所の俳優から若い俳優まで、声を揃えて「张黎監督の作品なら、何がなんでも出たい!」っていうぐらいの監督さんやね。

元々、撮影カメラマン出身の監督なので、一つの一つのシーンを繊細に撮られるんですよ.

撮影カメラマン出身の監督は中国には沢山いて、その代表としては2008年の北京オリンピックの総監督をしたチャンイーモウ監督ですね.中国を代表する大監督です。

チャンリー監督の演出は極端に言えば、時には台本があってないもんというか、現場で「こういうセリフをいって」みたいなことも日常茶飯事やね.現場で監督と相談しながら、セリフを決めたりとかする時もあるし、日本の撮影ではあまりみられない感じやと思う。

一つエピソードを言うと、2014年の少帅というドラマの撮影の時。自分が演じるのは张作霖の軍事顧問・菊池という役。息子の张学良との昼食をするシーンの撮影で、台本にはない演出を自分が提案したのね。つまり、菊池が食事をする前に手を合わせて「いただきます」という。で、それを見た张学良が「菊池顧問、何言ってるんだ?」と聞いてくる。菊池は柔和な顔で「日本人は食事をする前に、『いただきます』というんだ。これは、食べ物には全て命があって、命をありがとうという意味がある」というセリフを加えていいか、チャンリー監督に提案をしたわけ。日本人から見れば、当たり前の表現なんだけど、中国の人から見れば、人によっては複雑な気持ちになる言葉なんよね。実際、戦争中に沢山の中国の人たちの命を奪った、お前たち日本人が命の大事さを言える立場か? 正直その気持ちも十二分に理解できる。

ただ、その時代に全ての日本人が中国の人たちを傷つけたかと言えば、そうではないと思うし、やはり道徳心を持った日本人もいたと思う。そこで、さっき言ったセリフを加える提案をしたところ、チャンリー監督は、「いいよ」と快く受け入れてくれて、非常に柔軟性のある監督だなと認識したね。

あと、台本についてなんやけど、現場で台本持つって中国では当たり前で、役者と監督が台本を持ちながら、次のシーンをどう演技していくか相談するんよね。

日本の現場では、一部かもしらんけど、台本持って現場に入ると恥ずべきことという観念があるようなんだけど、台本持って現場に入ることが、セリフが頭に入ってないというイメージが生まれると言うのは、中国では全然ないね.自分は自由でいいんじゃないかなと。個人的には思うけど。。

挨拶とかもそうで、日本やと、現場に入ったら主役の方には必ず率先して挨拶しなあかんやん。

中国ってあんまそんなんないんやって言うたら、あれやけど、ないな。

例えばメイク室であったら、「ニーハオ」っていう時もあれば、

ある日、リハの時に初めて主演と顔を合わした時があって、でももうその時は監督を交えてシーンの相談にのめり込んでるから、主演を目の前にしてても、挨拶なしでそのまま演技プランの相談をしてる場合もあるし、それに対して主役も「この人、私に対して挨拶しないなぁ」という感情が出るわけでもないし、淡々と仕事に没頭してるわけよ。「こいつ、挨拶せえへんから、生意気や」という感情が生まれるのは日本人だけかもしれないね、もしかして.

もちろん、元気に挨拶されて、気持ち悪い人はおらんと思うけど、それはそれでええと思うねん。中国の方は、有名であろうが、有名でなかろうが、年上であろうが、年下であろうが、比較的、堅苦しい雰囲気というのは現場で作らないかな。

実はね、张黎監督とは今作で3作目のお仕事なんやけど、1作目が2002年のドラマで、その頃は自分は中国語があまり話せなくて、仕事もなく、友達も少なく、毎日北京のアパートで何を言ってるか聞き取れないテレビを見ながら、毎日を過ごしていた感じやね.孤独な日々やったね

ある日、アパートでテレビ見てたら、電話がかかってきて、その方は池さんっていう撮影カメラマンで、北京に来る前にある日本の友達から池さんの連絡先を教えてもらってて、北京に着いてすぐ池さんには連絡して、何かあったら、これ僕の携帯なんで連絡くださいって言ってたんよね.

で、その日連絡くれて、電話でたら、「今、北京のどこそこで撮影してるから、来ない?」って言うから、あ、行きます行きますって言うて、すぐタクシー乗って行ったんやけど、現場に着いたら、池さんが、監督を紹介してくれて、「この方が、張黎監督だよ」ってそれが張黎監督との初めての出会いなんよね.で、監督の第一声が自分を見るなり、「天皇!」って言うのよ.なに言ってるの?って池さんに聞いたら「矢野くん、監督が君に明治天皇役を演じさせようと言ってるよ」「はぁ!?」みたいな.それが、張黎監督のドラマ「走向共和」の明治天皇役に抜擢された瞬間なわけよ.

あれから21年経ってこのタイミングで張黎監督と又ご一緒に仕事ができるのが、非常に光栄やね.

これから、まだ2ヶ月続く撮影、気合いで乗り切るよ!

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